小規模事業者の商圏拡大・売上増加要因
  〜2016年版小規模企業白書〜
  商圏を拡大した(固定客・IT活用など)事業者は売上増加にある
  (1)事業者の7割が商圏拡大により売上増
   商圏や売上高の現状を見ると、業種によって商圏の広狭はあるものの、小規模事業者の売上高の
  ほとんどが同一都道府県内にとどまっています。 商圏の調査では、「同一市町村60.7%」が最も
  多く、「近隣市町村19.7%」と併せて約8割、「同一都道府県8.3%」まで含めると9割弱を占め
  ています。 このように、商圏が限定される小規模事業者ですが、直近3年間における商圏の拡大傾
  向を見ると、事業者の3割が、商圏が「拡大6.5%」、「やや拡大24.2%」と拡大傾向にあると回答して
  おり、商圏拡大に取り組む事業者の姿が浮かびます。
   また、「売上高が増加傾向の事業者」の約7割が、商圏が「拡大18.6%」、「やや拡大49.1%」と回答
  しており、業種別に見てもすべての業種において、「売上高が増加傾向の事業者」 の6〜7割が同様
  の回答をしています。  事業者の商圏拡大への取り組みが売上増に繋がりつつあることが伺えます。
  (2)得意先・固定客がいる事業者
   売上高が増加傾向の事業者は、その要因として、「得意先や固定客がいる70.3%」、「商品・サービ
  スの品質と信頼性がある65.8%」 を挙げています。  一方、売上高が減少傾向にある事業者では、
  最も多かった回答が「商圏自体(取引先や顧客)の景気が悪い66.5%」でした。
  (3)インターネット受注比率の高い事業者
   小規模事業者における宣伝・販売面でのITの活用状況についての調査では、「ホームページ41.4%
  ブログ、フェイスブック、ツイッターなど25.6%」、「電子メール、メルマガ16.5%」、「ネットでの受注、販売
  予約12.3%」 となっています。 反対に、「特にない43.9%」との回答もあり、宣伝・販売面では総じて低い
  ものとなっていますが、インターネットでの受注比率の高い事業者ほど、売上高が増加傾向にあります。
  経営計画の作成の効果を実感する経営者が増加した
   小規模事業者の53.0%が経営計画を作成しています。
  作成の動機は、「補助金申請で必要になった59.2%」という回答が最も多いのですが、「業績を向上させ
  たい58.1%」、「経営状態を正しく知りたい49.9%」など、経営に積極的に活用しようという回答がめだって
  きています。 また、経営計画の作成には、大半が税理士など外部者の支援を受けたとしています。
   経営計画作成の効果については、「経営方針と目標が明確になった73.8%」、「自社の強み・弱みを認
  識できた68.6%」となっており、肯定的な回答が7割になっています(2015年版では、同様の回答は5割で
  した)。 このことは、売上の増加にも現れており、経営計画を作成した事業者の34.5%が売上が増加した回
  答しています。 作成していない事業者のうち売上増となった事業者が20.2%と低調にあることからも、小規
  模事業者であっても経営計画は重要であることが伺えます。
   しかし、経営計画を作成していない事業者が約半数あり、税理士や金融機関などの外部者が連携して、
  作成を後押しすることが求められています。