自社の資金繰り対策 その2 7-03資金繰り改善
  「利益」と「キャッシュ・フロー」は同じではない
  利益が出ているのに資金が足りない、といった経験はないでしょうか。
 どこにその原因があるのか、検討してみましょう。
   前回は、売上債権の回収と仕入債務の支払いタイムラグが、資金繰りに
  影響を与えることについて、お話しをいたしました。
   通常の事業活動では、商品・材料の在庫、固定資産の取得のために銀行からの
  借入金等が発生します。今回は、これらの取引によるキャッシュ・フローについて見てみましょう。
   例えば、A社の決算財務内容
  前期の財務内容 当期の財務内容  
  現金預金 200 買 掛 金 600 現金預金   150 買 掛 金   600    
  売 掛 金 800 借 入 金 400 売 掛 金   900 借 入 金   300  
  棚 卸 し 200 資 本 金 300 棚 卸 し   200 資 本 金   300  
  機械装置 300 利益積立金 200 機械装置   250 利益積立金   200  
                    当期利益   100  
  資産合計 1500 負債及び       資本合計 1500 資産合計   1500 負債及び      資本合計   1500  
  当期は利益が100あるのに、現預金残高は50の減少になっています。  
  その原因は?  
   1.売上代金の未収(売掛金)が、前期より100増加している  
        未収金額の増加は、資金の減少になる △ 100    
   2.借入金残高が、前期より100減少している      
        借入金を返済分が、資金の減少になる △ 100    
   3.機械装置が、減価償却をして50減少になっている      
        現金の支出がない経費なので、資金の増加になる +50    
   4.当期利益が、100となっている   資金の増加になる +100    
    資金の増減 △ 50    
ポイント  売上債権残高の増加原因が、回収の焦げ付き等によるものでなく、売上増により  
  生じているとすれば、利益に見合った資金繰り対策が必要となります。  
  対策方法は?  
  ・A社の借入金が適正なのか、検討してみましょう。  
   1.継続的に必要な運転資金=売上債権+棚卸し資産-買入債務  900+200-600=500  
   2.自己資本(自己資金)=資本金+利益積立金  300+200=500  
   A社の必要運転資金は500となり、自己資金の500で賄うことができており、金融機関からの  
  資金調達は必要ありません。機械設備投資を行う資金調達であれば、借入金の返済期間を  
  機械設備の償却耐用年数に見合った年数によらないと、資金繰りが苦しくなります。  
   A社の場合は、減価償却費の50相当額を年間の借入返済額とすることにより、キャッシュ・フロー  
  は改善され、利益に見合う預金残高となります。  
   運転資金として銀行からの資金調達は要注意です。創業当初は、売上債権と買入債務とのバラ  
  ンスや資本金不足を借入金でまかなうのは仕方ありませんが、いつまでもこの状況が続く依存症  
  に陥らないことです。A社のように、運転資金は自己資本でまかなえるようにしましょう。