■会計 利益はどこへ消えたのか?
~ 貸借対照表から資産の運用状態を見る ~
利益が出ていると言うけれど、預金は増えてないよ…。決算が近づくと、社長からよく出る言葉
です。 損益計算書に計上された利益(黒字)はどこへ消えたのでしょうか。
その答えは、前期末と当期末の残高を比較した比較貸借対照表から知ることができます。
 例えば次のようなケースでは現預金が増えません。
 ● 当期利益が500万円だった。(資金の増加:+500万円)
 ● 2期比較で、借入金返済300万円、売掛金増加200万円、在庫増加200万円の差異が生じ
   ていた。             (資金の減少:▲700万円)
 ● 減価償却費を200万円計上した。(資金の増加:+200万円)
 ○ 差し引きすると、資金の増減が0円のため、現金預金残高は変わらない。
2期を比較して利益が増加しても現預金が増加していないという場合は、このように、利益の増
加分に見合う資金が、他の何かに使われてしまったことを意味します。
1. 売掛債権が増加する要因
・ 業績評価の基準が売上のみとなっている(営業担当者の評価も売上のみで、回収が評価の
対象になっていない)。
・ 営業担当者が、集金を忘れている(後回しになっている)。
・ 支払いの悪い、支払条件が良くない、回収サイトが長い取引先にも無理に販売している。
・ 回収が遅れている得意先への対応方法や責任が不明確であるため、対処が遅くなる。
・ 支払サイトが平均的に長期化している。
・ 大口や永年の取引先に対して、回収が弱腰であったり、社長が情に流されやすい。
・ 職人気質で物作りは熱心だが、回収には無頓着である。
・ 営業担当者が、成績を上げるために、取引先に無理に買ってもらっている。
・ クレーム対応が不十分であったり、返品、値引きなどが未処理のため、取引先が代金支払い
を見合わせている。
・ 取引先が「近々、大きな取引が入るから」というので、営業担当者が回収を先延ばしにしてい
る。
・ 売上の架空計上がある。
2. 在庫(棚卸資産)が増加する要因
・ 販売計画、販売予測の見通しが甘い。
・ 品切れによる販売ロスや材料ロスを防ぐために、多めに仕入れてしまう。
・ 仕入担当と販売担当の情報共有や連携不足のため、在庫が過剰になる。
・ 在庫管理が徹底されていないために、無駄な仕入が多い。
・ 陳腐化、破損、劣化した商品が在庫として残っている。
・ 実地棚卸が定期的に行われていない。
・ 架空在庫がある。