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新版・敬天愛人ゼロからの挑戦 |
著者:稲盛和夫氏 発行者:PHP研究所 |
未来へ挑戦する創造的経営 |
-自分自身を信頼する |
私は常に独創的なことを目指してきた。 独創的であるということは、まさに人がやったこ |
とのない、またできないと言われていることを実現させることである。 |
日本の技術や経営手法は、欧米の真似がほとんどで、日本のオリジナリティにより成功 |
したという話は、あまり聞いたことがない。技術者として、また日本人として残念なことであ |
るが、日本人の思考パターンでは創造的なことができにくいのではないかと思う。創造的 |
な領域では、日本人はハンディキャップを背負っているのではないかとすら私は思ってい |
る。 しかし、積極的な事業展開を図るためには、創造的な姿勢が不可欠となる。そして、 |
誰もやったことのない、真に創造的なことにチャレンジするということほど、難度の高い仕 |
事はない。 これは、まるで自分の鼻先も見えないような暗闇を案内もなしに歩くようなも |
のである。そこでは、蛮勇の徒は、恐らく立って歩き回るであろう。しかし、すぐに思いもか |
けない窪みに足を取られ転倒してしまうに違いない。 |
一方、怖がりの慎重居士は、四つん這いになって、手で恐る恐る探って進むであろう。 |
中には小心者で前へ進むことも退くこともできず、立ち往生する者もいるだろう。このよう |
に未知の分野を切り開こうとすると、その人の性格、人間性が端的に表れる。 |
前人未到の道を歩くのと、先達の轍をたどるのとはまったく違うことである。前者の場合、 |
確かめることができるのは自分だけであり、自分の手で触れ、自分の足で踏みしめ、自分 |
の頭で確認し、前進しなければならない。後者の場合は、先人の足跡を追うだけでいい。 |
真に創造的なことを始めようとする際、最も重要なことは、自分自身に対する信頼、つま |
り自身を持つことである。 自分の中に確固たる判断基準を持ち、それを信じ行動できるよ |
うでなければ、創造の領域で模索する間に、道を見失ってしまう。 |