会計がわからんで
 経営ができるか
   5月決算の会社は、比較的規模が大きく取引データ数もかなりある。各会社とも業績は、
  順調に推移し黒字決算であった。不思議なことに業績の良い会社は、経理がしっかりして
  いることだ。理屈ではなく、そうしたところにも努力があって会社は伸びているのであろう。
   事業する上で、会計の大事を稲盛和夫氏はこう述べている。
  「実学 経営と会計」より
    …ところで日本では、それほど重要な会計というものが、経営者や経営幹部の方々から
  軽視されている。会計と言えば、事業をしていく過程で発生したお金やモノにまつわる伝票
  処理を行い、集計する、後追いの仕事でしかないと考えているのである。
   また、中小、零細企業の経営者の中には、税理士や会計士に毎日の伝票を渡せば、必要
  な財務諸表は作ってもらえるのだから会計は知らなくてもいい、と思っている者もいる。
  経営者にとって必要なのは、結果として「いくら利益がでたか」、「いくら税金を払わなければ
  ならないのか」ということであり、会計の処理方法は専門家がわかっていればいいと思って
  いるのである。さらに、会計の数字は自分の都合のいいように操作できる、と考えている経
  営者さえいる。私は27歳の時に京セラを創業し、ゼロから経営を学んでいく過程で、会計は
  「現代経営の中枢」をなすものであると考えるようになった。 企業を長期的に発展させるた
  めには、企業活動の実態が正確に把握されなければならないことに気づいたのである。
    真剣に経営に取り組もうとするなら、経営に関する数字は、すべていかなる操作も加えら
  れない経営の実態をあらわす唯一の真実を示すものでなければならない。 損益計算書や
  貸借対照表のすべての科目とその細目の数字も、誰から見ても、ひとつの間違いもない完
  璧なもの、会社の実態を100パーセント正しくあらわすものでなければならない。
  なぜなら、これらの数字は、 飛行機の操縦席にあるコックピットのメーターの数値に匹敵す
  るものであり、経営者をして目標にまで正しく到達させるためのインジケーターの役割を果た
  さなくてはならないからである。
    このような考え方にもとづき、私は経理部に経営資料を作成してもらい、その数字をもとに
  経営してきた。その結果、京セラや第二電電もバブル経済に踊らされることなく堅実に発展を
  続けている。いま振り返ってみると京セラ創業時、会計というものをまったく知らなかったため
  それを自分で学び、「人間として正しいことを追求していく」という私自身の経営哲学をベース
  に、「会計の原則」を確立できたことが、その要因であると思う。